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【4400字超え】上半期に急に読書にハマった人が読んだ本全部感想書く【15冊】

今週のお題「上半期ふりかえり」

急に読書にハマりました。正確には読書にハマる事を「許した」と言った方が正しい。そもそも活字中毒のきらいがあり、小説にハマったら購入する本の量が膨大になるのではと心配して意識的に避けていましたが推しが…推しが本を進めるYouTubeチャンネルを見つけてしまってあれよあれよと読みまくっています。今回は4月頃前後から6月下旬の現時点までで読んだ本の感想を一個の記事に全部書きたいと思います。小出しにした方が記事を継続的に楽に出せるのはわかってるけど「そんなの知らね~!!物量で殴れ~!!」って心が言うから...。

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カラスの親指道尾秀介

初めてどんでん返しのあるミステリをちゃんと読んだけどラストシーン美しかった...!中盤のスリルのある展開もハラハラした!私は先が知りたいがばかりにちょっと雑に読んじゃって全然伏線に気がつけなかった。それでも楽しかった。登場人物の過去から現在に至る苦しい苦しい苦しい世界の末の救いにカタルシスを感じた。人生掛けた詐欺、人生を掛けたペテン...。

これがどんでん返しを読む楽しさか~!と新しい世界を知れた。もっともっとひっくり返るような小説たくさんあるんだろうなぁ!たまに仲間うちでの心地良さが感じられても、前半から後半までずっと真綿で首を絞められてるような人生の閉塞感が続く。過去に追い詰められていく。そこからのある種鮮やかな手際は映画の「グランドイリュージョン」観るような気持ちになった(グランドイリュージョンは閉塞感ないしもっと明るいけど) 

『向日葵の咲かない夏』道尾秀介

イヤミス...イヤミスなんだけ読後感が悪いとは一概には言えない。結末も「こうせざるを得なかった。この物語は。」という諦めがある。もうこうなったら仕方ないよ。もうこうなったら...。結末は個人的には救いがあるように感じた。
そこには主人公の中だけだとしても、多大なる身勝手な犠牲の上の脆くて虚構なもので出来ているとしても「希望」があるように感じた。主人公はこれからも、この自分で生きていかねばならない。私達は主人公程じゃないとしても誰しも物語を抱えながら生きる。

物語を通して夏の、逃れられないあの暑さがへばりついている感じがする。暑さで項垂れで歩く先で顔を上げると物言わぬ向日葵だけがそこにある。向日葵だけが知ってる。向日葵が「持っている」。

この本は人を選ぶと言われてるけど私は好き。私意外とイヤミスに耐性あるかも?

『シャドウ』道尾秀介

何段階にも仕込まれたどんでん返しにハラハラしつつ最後に明かされた真実には本当にグッときた。理不尽に傷つけられた過去は消えない。大切な人を失った悲しみも決して消えないだろう。それでも。
主人公が守られる少年ではなく、意志を持ったひとりの人となる。道尾先生は読者が望んでいるものが手に取るようにわかっていて、そこから外れることも容易いだろうにこの結末を選んでくれたことに感謝してしまう。道尾秀介先生が描く人間ドラマ、私好きだわ。

『透明カメレオン』道尾秀介

道尾先生ってなんでこう…読者の本当に読みたいものかわかるんだろう凄いわ…。ラスト泣いた。泣いたよ。道尾先生が「友愛」とか「恩返し」を書くとこうなるのかという形を見て…もうほんと凄いね…どうしてこんな物語を書ける…?(語彙力)きっと私の人生に現れた優しい人たちって言わないだけで全員多かれ少なかれ辛さを抱えて生きてきて、自分達のことだけでも精一杯なのに、それでも手を差し伸べてくれていたのだと思う。登場人物も私の人生に居てくれた人達もみんな、みんな幸せになってくれよと願わずにいられない。

「仏典童話」文 渡辺愛子 

想像の3倍良かった。仏教に関する童話が何篇も入ってるんだけど全部見開き1ページの長さで超読みやすい。そして教訓めいた印象よりも登場人物がお釈迦様や悟りを開いた人たちに出会った時の感動や心の在り方の変化が重視されている。有名な話だけど死んだ息子を抱えて薬を求め歩く母親の話「けしの種」は内容を知ってても目頭がギュッとなった。短編の扉にその文章の中でのエッセンスになる挿絵と1文書き出されてるんだけどそのセンスも良い...。正直仏陀の人生を語る話よりも、仏陀に出会った人の話をもっと知りたくなる1冊(すなわちそれ仏教をや)

『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』フクチマミ / 村瀬幸治

母になって初めて「身体を大切にすることを息子にどう伝えれば良いのか」考えるようになった。きっと自分の感覚はもう時代にも子供の権利にもそぐわなくなっててアップデートが必要だと思ったのでこの本で具体的な「身体や心の慈しみ方」を学べて良かった。性教育は身体を守るだけではなく自己肯定感を養うことにも、親子の信頼関係を育てることにも繋がる。正しい知識をつけながら、息子の権利を大切にしていきたいな。

『ルビンの壺が割れた』宿野かほる

もう初っ端から不穏。やり取りの回数の差も不穏だし、内容の濃さの差も不穏。最後のページの1行に頭ぶん殴られたような衝撃があった。ちょっと頭がグワンとした。これは読まないと決して体験出来ない。

儚い羊たちの祝宴米澤穂信

帯の「味わえ 絶対零度の 恐怖を」にびくびくしながら読んでた。戦前の上流階級ので起こるおぞましい5つの出来事。上流階級のお嬢様達と使用人の語り口が上品なので、作品全体もおぞましいだけではない耽美な雰囲気が漂っている。ホラーさもイヤミスさもそこまでないし、5つの連作すべてサイコパスによる犯罪だと思えばそこまでびっくり!!!っていう展開はなかったかも?4話目の『玉野五十鈴の誉れ』が1番好きだった。「五十鈴は私の望みを叶えられなかったことはない」は何重にも意味がかかってて...いやぁ...苦虫を噛み潰したような顔になれて良かった。苦虫を噛み潰したような顔になるためにミステリーを読んでるところがある。

『告白』 湊かなえ

超有名なイヤミスと言えばのこの作品。最悪なピタゴラスイッチ。もう最悪。最悪が最悪を呼んで最悪なことが起こって最後の「ピタゴラスイッチ♪」のところでパカッと開いたら地獄みたいな話だった。すごいよ頭から最後の1行までずっと嫌な気持ちになる(喜)子を育てるものとして親が子に与える影響って大きいと思うから動機として有り得ると思ってしまうけど、それは許されない、マジで許されないものなのだとマッハ5ぐらいの速さでビンタするのを見てる気持ち...何言ってんだって感じだけど...。この最悪なピタゴラスイッチが「そんなんアリかよ」にならずに「そりゃその玉そのまま転がってったらこうなりますわ...」という納得感がある。これがイヤミスの女王の力なんだと思った。

イニシエーション・ラブ乾くるみ

中学生か高校生の時に1度読んでるはずなんだけど綺麗さっぱりすっかり忘れたので再読してみた。読み返してわかった。中高生の頃の私はちゃんと読んでなかった(笑)

途中急激に現れた違和感を感じながら読み進めると本編の最後のページでの「えっそういうこ...え?いつから???」「そうかアレもコレも...」ともっかい戻って確認する作業が止まらなくなる笑 最後についている用語集がいいよね。一応ハッピーエンド?ハッピーエンドなんだよね?収まるところに収まってるし笑 アレもコレもアレもコレも伏線。よく出来ている。 

『ホテル・ピーベリー近藤史恵

最初はほのかに感じる不穏さがひたひたと迫ってきて、中盤からの主人公の陰と事件が共鳴するように煮詰まっていく。どんでん返しの驚きよりも、不穏さが表に現れた時やっと通じあった人達の希望を感じた。しかしホテル・ピーベリーに訪れる人々のように未来への希望は必ず叶うものじゃないかもしれない。このまま誰も触れることなく「冷凍睡眠」のままになるかもしれない。旅先で親しくなった二度と会うことのない人のように。 

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

主人公に関するどんでん返しの大きなひとつは冒頭からなんとなく予想がついた。人物像が現代と離れてきているから違和感に気が付きやすかったのかも。発売当時に読んだからわからなかったと思う。エネルギッシュではあるが愛するということからは逃避していた主人公と自身の人生から逃げて逃げて逃げ続けたヒロイン。2人が最後に明かされる真相をこういう形で受け入れるとは…。最終ページ、本当に最後の最後のページに書かれた格言の引用にはグッときてしまった。苦しい、苦しい中で最後に掴んだ希望は実現しないかもしれない。それでもともにいる間は楽しくやっていこうじゃないか。どうして人は人と一緒にいるのかという問いの答えの1つだと思う。

『リバース』湊かなえ

あのね、5章で終わって良かったってこんなに願ったことないよね。終章を開くのがあんな怖いことないくらい5章が美しいのよ。最後の2ページで顔を両手で覆っちゃったよね。もう言葉にならない...なんてことだ...。湊かなえ先生はイヤミスの女王だから覚悟してた。それでも顔を覆って「いや...あぁぁ...」みたいな声しかしばらく出なかった。
イヤミスと言えど胸糞悪いわけじゃない(ルビンの壺が割れたの方がよっぽど最悪な気持ちになった)どんでん返し読みたい、イヤミス気になるっていう人におすすめできる。主人公が真相に向かっていく中での精神的な変化と自己への向き合い方は真摯だし、描写もグロくないしラストスパートに向かう様は美しいのに...いやほんと終章...やられた...笑

すべてがFになる森博嗣

面白かった...。私まだ長編小説読み慣れてなくて読んでる途中で「で?結局どうなるの??で??」って先を焦りがちなんだけどすべてがFになるは本当に頭から焦れることなくずっと面白かった...。天才が天才をずっと理解しようとしてるけど手が届くと思った瞬間離れていく様を「綺麗だなぁ」と思いながら眺めてる気持ちだった(なにこの感想)
犯人の気持ちもトリックも全然共感も理解も難しいのに面白いってすごい。

『黒猫を飼い始めた』講談社

面白かった!本を手に取ったきっかけはquizknockの河村さんが短編を寄せていたからなんだけど同じ書き出しから始まる26人もの作家さんの短編が読めて、これから誰の本から読んでいこうか決める大きな指標になった。どんでん返しのミステリも千差万別で面白かったし、ホラーっぽいのものこの短編くらいならなんとか読める。この中なら結城真一郎先生、柾木政宗先生、似鳥鶏先生、犬飼ねこそぎ先生、高田崇史先生、杉山幌先生、円居挽先生が好みだった。これからいろんな短編集を読みたいと思った。


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そして今月と来月頭に読む予定の本たち。実用書も大好きなのでそちらも感想書きたいなと思います。